- 発行日 :
- 自治体名 : 宮崎県都城市
- 広報紙名 : 広報都城 令和7年8月号
終戦から80年を迎える今年。年月の経過とともに、その時代を生きた人たちの数は確実に減少の一途をたどり、戦争の記憶はだんだんと過去のものになりつつあります。
世界に目を向けると、今なおさまざまな国や地域で紛争が起き、私たちが当たり前のように享受している平和で豊かな生活とは程遠い生活を強いられている人が数多くいます。現代でも「平和」は当たり前のことではありません。今一度立ち止まり、改めて平和について考えてみませんか。
本特集では、戦時中の日本や本市で起こった出来事について、改めてその恐ろしさや悲惨さ、人々の苦しみや悲しみの記憶を伝えるとともに、私たちがこれからも平和の尊さを忘れないための取り組みや、若い人たちの平和への思い、歴史資料館特別展など市の取り組みについて紹介します。
※タイトル背景は、本市出身の日本画家・大野重幸(じゅうこう)が都城空襲直後の明道小学校を描いたスケッチ。当時、ありあわせの画材で描いたと伝えられています(本紙参照)
◆経済不況と暮らし
昭和5年頃、日本は昭和恐慌と呼ばれる深刻な経済不況に陥ります。本市でも、企業や工場などの倒産や休業が相次ぐとともに、従業員の賃金低下や未払いが起き、多くの失業者もみられました。
さらに、天候不順や風水害の影響で農業面でも苦しい局面を迎えた日本が、経済不況の打開や資源を国外に求めた結果、昭和6年に満州事変が起こります。これを機に日本は戦争へと大きく歩みを進めました。
◆移り変わるまちの様子
昭和9年、本市では市民総がかりの労働奉仕作業によって飛行場が完成。都城飛行場と呼ばれ、軍だけでなく、民間も利用していました。
また、昭和10年になると昭和天皇による陸軍特別大演習が本市で実施。本演習にはさまざまな準備が必要で、開催地の本市は大きな影響を受けたことが分かっています。
◆戦争のはじまりと暮らし
昭和12年、日本は中国との全面戦争に突入。召集を受けた人たちは、駅などで家族や知人らからの出征祝いを受けながら、戦地へ向かいました。
一方で、婦人会や学校が中心となり、前線を物資供給などで支える「銃後の守り」と呼ばれる活動が盛んになり、国民全員で「戦争」を戦う意識が生まれていきます。
物資の統制も始まり、生活必需品は切符制による交換が行われ、本市でも食料品から衣料品まで幅広く対象になりました。また、戦地で利用する装備の充実のため、金属製に代わり陶製の製品が作られるなど、代用品と呼ばれる日用品も普及します。物資不足により、残された国民は耐え抜く暮らしを強いられました。
◆空襲と特別攻撃隊
本市は、昭和20年の都城西飛行場への空襲以降、終戦までの間大きな被害を受けています。この頃の本市には飛行場が3カ所あり、さらには特別攻撃隊も配備されていたため、空襲の標的にされていました。
本市から出撃した特別攻撃隊は79人。18歳から30歳の若者たちでした。彼らは、国のため家族のためと戦地へ飛び立っていきました。昭和20年4月から7月の間に、都城西飛行場から2回、都城東飛行場から15回の計17回にわたって出撃しています。
■戦前・戦時中の主なできごと
昭和4〜5(1929〜1930)年
▽世界恐慌・昭和恐慌により世の中が不景気になる
昭和6(1931)年
▽満州事変が始まる
昭和9(1934)年
▼多くの市民の勤労奉仕により、都城飛行場が建設される。後に都城西飛行場と呼ばれる
昭和10(1935)年
▼昭和天皇が都城で陸軍特別大演習を統監
昭和12(1937)年
▽日中戦争が始まる
昭和13(1938)年
▽「国家総動員法」公布
昭和14(1939)年
▽第二次世界大戦が始まる
昭和15(1940)年
▼都城市でも切符制・配給制が始まる
昭和16(1941)年
▽「国民学校令」により従来の小学校が「国民学校」に改称。戦時体制に即応した教育が行われる
昭和18(1943)年
▼食糧事情が深刻化。学童も授業を中止し食糧増産活動に励む
▼川崎航空機株式会社工場建設に伴い、試験用として都城東飛行場が建設開始。翌年、完成する
昭和19(1944)年
▽米軍による沖縄への攻撃が本格化
▼国民学校初等科以外はほとんど勤労奉仕作業をして過ごす
▼都城飛行場を陸軍が接収する
▼沖縄から都城への集団疎開が始まる
昭和20(1945)年
▼都城北飛行場が建設される
▼都城から79人の特別攻撃隊と61人の援護隊が出撃(4月〜7月)
▼都城市域が空襲を受ける(3月〜8月)
▼8月6日 都城大空襲で市街地が大きな空襲を受ける
▽8月6日 広島に原子爆弾投下
▽8月9日 長崎に原子爆弾投下
▽8月15日 ポツダム宣言受諾。日本は無条件降伏する
※都城のできごとは、都城市史、山之口町史、高城町史、山田町郷土史、高崎町史を参考に作成
▽世の中のできごと、▼都城のできごと